いやー何となく何となく毎日毎日が当たり前のように過ぎていって気づくともう2月も終わって「今年もアッという間に終わってしまいそうだなー」なんて思います。
日々当たり前のように当たり前に過ごせることって、何も無いからこそとても幸せなことなんだって思わされるようなお客さまがお見えになりました。
つまり、それは癌になってしまったお客さまでした。
長年担当させてもらっているのですが、いつもは予約の電話は代わったりしないのですが、珍しく僕に変わって欲しいとのことで電話に代わりました。
そして
「工藤さん、実はわたし、癌になっちゃったの」
最初の言葉を聞いて唖然としてしまった僕がいました。
そしてさらに、
「それでね、今度手術して抗ガン剤治療をするから、もしかしたら美容室に来るの最期かもしれないから、思いっきりハデにしたいの………お願いしてもいい?」
なんか込み上げてくるものがありました。
もちろん、僕は美容師です。
当たり前に全力で美しくするに決まっています。
もうね、
「後悔ってなに?」
って言われちゃうくらいハデにステキに仕上げようと心に誓いました。
そう思ったのには理由があります。
自分の母も癌に蝕まれ、抗がん剤でツライ思いをしてきていたのをマジマジと近くで見ていたので、その気持ちが痛すぎるくらいわかったんですよね。。。
少しでも笑顔にして勇気づけることができるのであれば少しでも力になって差し上げたい
前向きな気持ちにしてあげれることもまた、美容師が持っているひとつのスキルなのです。
「別に死ぬって決まったわけじゃないですし…」
思わず現実を受け止めたくない衝動からそんな言葉が出そうになりましたが、とても軽々しくそんなこと言えない。。。
軽々しく言える前向きな言葉よりも前向きな気持ちになれるコトをプレゼントしたかったんです。
そして来店日当日。
少し痩せこけた感じだけれど、いつもと変わらないステキな笑顔を見て、とても安心した気持ちになりました。
カウンセリングでいつもよりも少しだけ神妙な面持ちな顔をしたお客さまの言葉の端々から、丁寧に気持ちを受け止めて今日のイメージを共有していきます。
カットして、カラーして、パーマして。。。
僕もいつもよりも少しだけ緊張しています。
今日はもちろんハデにしたい!とのオーダーではあったんですが、いつも通りゆっくりと目を閉じて施術を受けているのを見て、
あ、いつも通りの日常な感じにして欲しいんだな…
と気づきました。
僕がとても緊張してたの伝わらなかったかな………
終わってみればいつも通りリラックスして笑顔のお客さまがそこにいました。
仕上がりもハデになって満足してくれていたようでした。
そして帰り際にいつもの何倍もの笑顔で
ありがとう!
って言ってくれました。
その瞬間、久々に鳥肌が立ちました。
ひとつひとつを噛みしめてくれていたんだな、と。
僕もね、正直心配でたまらないですし、早く元気に良くなって欲しいって願っています。
自分の母と重ねる部分もあるから余計に敏感に感じ取ってしまう部分もあるのですが、少しでも役に立てることができたのならば美容師として本望です。
時折、ドラマティックな場面に出くわすのが美容師という仕事。
そんなステキな仕事だってことを思い出させてくれたお客さまでした。
こちらこそありがとうございました。
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